列車内読書。買い込んでる輝アニキの文庫本で「私たちが好きだったこと」に順番が回ってきた。偶然知り合った4人の男女が同じ屋根の下で同居生活を始めるという一風変わったストーリー。流転の海シリーズなどに比べると、まだ軽妙で読みやすく、一気に読んでしまった。
以前、ローラーあにきも響いたという一節、大事にしていたフィルムを叩き売って、面倒を見ている若いカップルの分娩費に充てるという友人カメラマンに、主人公が「(叩き売るとは)今までいったい何のために頑張ってきたんだ」と咎めるシーン。
しかし、そのカメラマンの友人が返したセリフ。
「でも命も金では買えない。金で買えないもののために、金が必要なんだ。金ってやつは金で買えない物のために真価を発揮する」
どこかの社長が雑誌にて「経済なき道徳は戯言、道徳なき経済は悪」と語っていたことを思い出した。確かに、金で買えないもののために、あくせくお金を稼ぐのだ。世間のおっさん連中だって「物欲物欲」などと口では言っているが、「ジブンだけ」のための物欲には、皆多少、身の丈の折り合いをつけているもの。つけるべきもの。改めて。
あるべき、「お金」の姿をガッチリ噛み砕いてくれてるぜ。
さて物語は、二組の奇妙なカップルの心の動き、そして男の気持ち(やせ我慢)もジツにうまく代弁してくれている。
相手に裏切られたあげく「シズカニ、シノゲルトオモウ」とカッコつけて一人旅に出たものの、当たり前ながら落ち込んだり、やっぱり「しのげない」、「許せないと」心に誓いながら、旅から帰ってきて相手の顔を見た途端、自分の決心も揺らぐ「素のオトコ」臭さが描かれてる。
みっともなく嫉妬に狂いながらも、相手が自分の元を離れていくことを冷静に許すと決心した。それにも関わらず、まだ未練の見え隠れする「素のオトコ」臭さが描かれている。
しかし最後に2人の男は、とにかく、前を向いて相手を許した。重松清さんで読んだ「押して忍ぶ」男のあるべき姿をなんとか貫いた。そのことで、後悔もなく「心地よく」過去を振り返る書き出しがまた生きる。
「押して忍ぶ」は男気の理想だが、多少ジタバタしてみたり、多少みっともなく身もだえたりしても、そこにたどり着くなら、それで構わんじゃないか。読み終えて、どこか気持ちが爽やかになった。


気分になりますわ。
「ほれほれ、心配しなくても、みんなおんじ事でクヨクヨ
したり、ヘラヘラしたりして生きているのだよ」
ってカンジで。
波乱に満ちたご自身の体験を、噛み砕いて噛み砕いて読者に処方してくれてるような
気がしました。「見透かされる」も納得しますわ。