アホウドリに一目ぼれして、30年間に70回以上も絶海の孤島に通い続けた 長谷川 博氏のノンフィクションを読みました。
私は もともと鳥が好き、とくに野生の大きな鳥が好きです。
絶滅が危惧されているアホウドリをコロニーで繁殖させるため、デコイ作戦が取られた。
デコイとは模型のこと。
新しいコロニーを作ろうと斜面に置かれた 本物そっくりのデコイの前で一羽のアホウドリが一生懸命に求愛のダンスをしている映像を偶然見ました。
まわりには本物のアホウドリがいるのに、カレは何故かこの模型の鳥にホレてしまったのです。 その姿がけなげで、切なくて、いとおしくて、いっぺんにこの鳥が好きになりました。
著者が観察を続けた「鳥島」は東京から南に580キロ離れた、標高394メートルの小さな火山の無人島です。 周囲は切り立った崖で、燕崎という所の斜面に従来のコロニーがある。
30年前、観測をはじめた頃、アホウドリは40組あまりのつがいが、たった15羽のひなしか育てることが出来なかった。 それが現在、325組が200羽以上のひなを育てるようになった。
アホウドリは大型の海鳥、著者は初めて間近で見たとき、なんと上品で美しい鳥だろうと感動したと次のように記している。
「全身白色だが頭部はヤマブキの花のような濃い黄色で、くりくりした大きな目、くちばしは桃色でその付け根に黒い皮膚の縁取りがある。首からふっくらした胸にかけて優雅な曲線を描き、淡い黄色から象牙色へと微妙に変化する。
もっとも印象的だったのは黒い目だった。個体数が少なく、絶滅の危機に瀕している鳥だから、さびしそうな沈んだ目をしているのではないかと、ぼくは勝手に思い込んでいた。
しかし、そんな暗さは微塵もなく、むしろ凛とした力強さが感じられた」と。
アホウドリは陸上での動きが鈍く、すぐ人間に捕まえられたためこんな名前がついたが、「オキノタユウ」という別名もある。
だが、アホウドリでいいではないか、鳥の美しさが名前の謂われなど消し去ってくれる。
いつか、濃青色の海面を真っ白な翼に光をうけて、羽ばたきもせずグライダーのように滑空する姿を見たいものです。
そして、こんな美しいものを追いかけて生きている男もいいなと思う。