中世史の大家、石井進さん最後の著作です。天皇を中心とした西国政権から、源頼朝によって東国政権が樹立され、権力が西と東に分かれ、また一遍、日蓮、忍性等の新しい仏教のうねりも巻き起こりました。時代が激しく移り変わった中世という時代に何が起こっていたのか?普通に生活していた人々の活動を掘り起こすことで見えてきた、下から見た新しい中世像を提示しています。
焼き物に例えて言えば、博物館や美術館に収蔵されている名品だけで焼き物の世界が成り立っているわけではなく、その裾野には一般生活に使われた無数の焼き物があったわけです。
驚いた点として、現在の耐寒品種が出来るまでは稲の生育には7,8月の平均気温が19度を切った時に稲の収量が半分以下になってしまうと言う事です。鎌倉幕府の成立時期は温暖期にあたり、東北地方北部にまで稲の栽培地域がどんどん広がっていきました。東国政権の権力基盤が北上した事で、武士政権が誕生した要因の一つとなった。13世紀からは小氷河期に当たり、冷害型飢饉が頻発した。という事になるようです。文書史料だけでなく、その時代に起きた社会事象を幅広く見る視線を持つ事で事で全く新しい視野が広がってくるようです。