鉄西区の監督王兵の新作映画。「鳳鳴(フォンミン)―中国の記憶」一人の中国人老女が第二次大戦の終戦から今に至るまでに体験してきた歴史の一人語りを納めた映画です。終戦後の国共内戦、知識人下放、文化大革命、と世界の仕組みを一晩でまるきり作り変えるようなコトを何度もしてきた近代中国の歴史を体に刻み付けながらも、抑えつけられ、澱のように心の底に溜まっていた記憶を、個人の物語として再生する行為をただ記録した映像でした。
3時間近くある映画なのに、ショットはほとんど変わらず、観る者はただ語り続ける老女とその語りを聞き続けるだけ。カットが変わらないので、その語る老女を見続け、また、語りを聞き続けることを強いる、映画館という空間でしか成り立たないような難儀な映画です。体験してきたことがとんでもないことなので、話している内容、老女の表情の変化、カメラの前で起こったであろう時間の経過等々、の微細な情報を伝える為に、カメラを固定しただ長回しをヒタスラ行うという手法に行きついたのだと思います。この映画も前作と同様、観る者に映像を体験させる、という質のものであることは間違いありません。